味噌と放射能の話:六号通り診療所所長のブログ:So-netブログ
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
味噌汁が放射線障害に効果がある、
という話があります。
本当でしょうか?
この話は長崎の原爆の爆心地近くで被爆をされた、
秋月辰一郎先生という医師の著作が、
その元になっています。
この先生の著作は幾つかあって、
そのニュアンスは著作によっても異なる部分があるのですが、
概ね経験的に塩分に一種の解毒作用がある、
という考えから、
被爆後ワカメの味噌汁などを毎日食べていたところ、
放射線障害の兆候が出ないで済んだ、
という内容です。
当初の塩分が良い、
という内容が、
次第に味噌が良い、
と言う内容に変わって来ているようです。
その後、
広島大学原爆放射線医科学研究所の、
渡辺敦光先生を中心とした研究グループが、
主に味噌の放射線障害や発癌予防効果について、
研究を行ない、
論文も多数書かれています。
前方の胎盤は、痛みを敷設
その殆どは動物実験で、
発癌を誘発する物質を投与したラットを、
通常の餌と味噌を添加した餌に分けて飼育し、
発癌の防止効果を見た、
というような内容のものが典型的です。
僕は今回そのうちの幾つかの論文を読みました。
確かに有意差の出ているものもありますが、
人間に適応出来るほど、
クリアな結果とは思えませんでした。
人間においては、
乳癌に大豆蛋白が予防効果があるかも、
というデータは幾つかありますが、
それも「やや」という程度のものですし、
放射線障害とは基本的に別物です。
従って、文献を読んだ時点の僕の印象としては、
勿論そうした効果が皆無とは思わないけれど、
多くのテレビで宣伝するサプリメントの効果と、
同程度の根拠しかなく、
真に受けるのはあまり賢明ではないのではないか、
というのが正直なところです。
ただ、渡辺先生のお話には、
ちょっと面白い点もあります。
高血圧の人は、
味噌汁を飲むな、とよく言われますね。
それは味噌汁には塩分が、
多量に含まれているからです。
うつ病の妊娠分娩に関する記事
しかし、塩分のみを摂るのと、
味噌汁の形で塩分を摂るのとを比較すると、
味噌汁の方が血圧を上昇させないのです。
これは何故かと言えば、
味噌汁には特に自然塩を用いた場合には、
ナトリウムと同時にカリウムも含まれていて、
カリウムがATP感受性カリウム・チャネルを阻害することにより、
腎カリクレインの分泌からキニンが上昇、
それによりナトリウムの排泄が増加して、
ナトリウムの負荷を相殺するからです。
つまり、カリウムには、
塩分としてのナトリウムの毒性を、
相殺するような作用があるのです。
塩分は胃癌のリスクであることが知られています。
渡辺先生の実験では、
ラットに胃癌を誘発する物質を投与し、
塩分のみを与えた場合と、
その塩分と同じ量の塩分の含まれている完熟味噌を与えた場合、
そして2倍の塩分を含む完熟味噌を与えた場合で、
その後の胃癌の発症を比較したところ、
塩分のみと比較して、
2倍の塩分を含む味噌でも、
その胃癌の発症は少なかった、
という結果が示されています。
妊娠中のいびき
この結果は発癌においても、
味噌に含まれているカリウムが、
塩分の毒性を相殺している事実を、
示しているように思えます。
(メカニズムはキニンでは説明出来ないので不明です)
もう1つ興味深いのは、
完熟味噌であることが、
発癌防止効果としては重要で、
発酵初期の味噌では、
それほどの効果が見られない、ということです。
発酵による変化というものが、
先生の研究結果を信用すれば、
大きなポイントだということを示しています。
まあ、血圧の不安定な方を除けば、
ワカメの味噌汁を熟成味噌で調理し、
1日1杯程度食することは、
ヨードとカリウムとナトリウムとを、
バランスよく摂取出来るという意味で、
それがどの程度放射線障害の解毒に有効かは分かりませんが、
決して悪くないチョイスだという気がします。
これが昆布ではヨードが多過ぎるので、
ワカメというチョイスも結構絶妙なのです。
今日は味噌と放射線の話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
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